虐待のケース・虐待発見チェックリスト
障害者虐待は
あなたの身近に潜む悲劇です

「虐待」というと、生命に関わるようなひどい暴力や悪質な行為ばかりが連想され、身近な問題ではないと感じる方もいるかもしれません。
しかし、「虐待」は日常の生活の中に潜んでいます。それは社会における「障害のある人」への差別や偏見、無関心と無関係ではありません。
「虐待」は“人間の尊厳”を脅かす行為であり、社会に暮らす全員が「見逃さない・見過ごさない」意識を持つことが求められています。
虐待発見チェックリストを配布しております。
下記のリンクより、ダウンロードが可能です
障害者虐待のケース
養護者による虐待 (親・兄弟など親族を含む)
金銭管理を任せた親戚が着服している上通帳・印鑑も返さない
福祉施設に通うAさんは、母親の死後、一人暮らしを始めましたが、金銭の管理に不安があったため、叔父さんに「預金通帳と印鑑」を預けました。
はじめの数カ月は叔父さんがAさんに生活費を手渡ししてくれましたが、しばらくたつと、叔父さんから渡されるお金が少なくなってきました。
Aさんは食事や着替え、医療費の支払いにも困るようになりました。
Aさんは叔父さんに「通帳と印鑑を返してほしい」と話をしましたが、叔父さんは「Aさんは障害があり無駄遣いをするからだめだ。
Aさんの保護者の自分がお金を管理するのは当然だ」と取り合いません。
施設での虐待 (施設職員・他の利用者など)
施設職員に怒鳴られる他の利用者からも暴言や暴力を受けている
福祉施設で生活しているBさんは、言葉を探しながら話すため、会話に時間がかかります。
Bさんは施設で、ある特定の職員からいつも「もっとはっきり話せ!」と怒鳴られています。
その様子を見ている他の利用者もBさんに対して暴言をはいたり、時には、頭や手を叩くなどの暴力をふるってくることもありますが、職員は止めるどころか見て見ぬ振りをしています。
Bさんは「自分が悪いから仕方がない」と思って、誰にも相談せず我慢しています。
職場での虐待(使用者・上司・同僚など)
上司に障害のことで嫌がらせを受け職場で孤立し精神的に苦痛
工場で働くCさんは、工場長のDからいつも障害のことをからかわれています。
Dの暴言はだんだんエスカレートしていき、Cさんは精神的な苦痛から、仕事でミスを重ねるようになってしまいました。
Dの暴言やいやがらせは続き、はじめは見て見ぬ振りをしていた同僚たちも、Dの態度の影響を受け、あからさまに無視するようになり、Cさんは職場で孤立してしまいました。
苦労して得た仕事なので退職はしたくありませんが、職場には相談する相手も無く、このままではキレてしまいそうです。
障害者虐待の例
1.身体的虐待

暴力や体罰によって身体に傷やあざ、痛みを与える行為。身体を縛りつけたり、過剰な投薬によって身体の動きを抑制する行為。
【虐待の具体例】
平手打ちする/殴る・蹴る/壁に叩きつける/つねる/無理やり食べ物や飲み物を口に入れる /やけど・打撲させる/身体拘束性的な行為やその強要等
身体的虐待のサイン
- 身体(頭、顔、頭皮を含む)に小さな傷が頻繁にみられる
- 太ももの内側や上腕部の内側、背中などに傷やみみずばれがみられる
- 回復状態がさまざまに違う傷、あざがある
- お尻、手のひら、背中などに火傷や火傷の跡がある
- 急におびえたり、こわがったり、震えるたりする
- 「こわい」、「嫌だ」と施設や職場へ行きたがらない
- 傷やあざの説明のつじつまが合わない
- 手をあげると、頭をかばうような格好をする
- 自分で頭をたたく、突然泣き出すことがよくある
- 医師や保健、福祉の担当者に相談するのをちゅうちょする
- 医師や保健、福祉の担当者に話す内容が変化し、つじつまが合わない
2.性的虐待

無理やり、また拒否や抵抗ができない障害者に、同意と見せかけて、わいせつなことをしたり、させたりする行為。
【虐待の具体例】
性交/性器への接触/性的行為を強要する/裸にする/キスする/本人の前でわいせつな言葉を発する、又は会話する/わいせつな映像を見せる等
性的虐待のサイン
- 不自然な歩き方をする、座位を保つことが困難になる
- 肛門や性器からの出血、傷がみられる
- 性器の痛み、かゆみを訴える
- 急におびえたり、こわがったりする
- 周囲の人の体をさわるようになる
- 卑猥な言葉を発するようになる
- ひと目を避けたがる、一人で部屋にいたがるようになる
- 性器を自分でよくいじるようになる
- 眠れない、不規則な睡眠、夢にうなされる
3.心理的虐待

脅し、侮辱などの言葉や態度、無視や、嫌がらせなどによって精神的に苦痛を与える行為。
【虐待の具体例】
「バカ」「あほ」など障害者を侮辱する言葉を浴びせる/怒鳴る/ののしる・悪口を言う/仲間に入れない/子ども扱いする/人格をおとしめるような扱いをする/話しかけているのに意図的に無視する等
心理的虐待のサイン
- かきむしり、かみつきなど、攻撃的な態度がみられる
- 不規則な睡眠、うなされる、眠ることへの恐怖、過度の睡眠などがみられる
- 身体を萎縮させる
- おびえる、わめく、泣く、叫ぶなどパニック症状を起こす
- 食欲の変化が激しい、摂食障害(過食、拒食)がみられる
- 自傷行為がみられる
- 無力感、あきらめ、なげやりな様子になる、顔の表情がなくなる
- 体重が不自然に増えたり、減ったりする
4.放棄・放任

食事、排泄、入浴、洗濯などの世話、必要な福祉サービスや医療や教育を受けさせず、障害者の心身を衰弱させる行為。
【虐待の具体例】
十分な食事を与えない /入浴させない/着替えをさせない/衛生状態の悪化を放置する/必要な医療・教育を受けさせない・制限する/同居人による身体的虐待や心理的虐待を放置する等
放棄・放任のサイン
- 身体から異臭、汚れがひどい髪、爪が伸びて汚い、皮膚の潰瘍
- 部屋から異臭がする、極度に乱雑、ベタベタした感じ、ゴミを放置している
- ずっと同じ服を着ている、汚れたままのシーツ、濡れたままの下着
- 体重が増えない、お菓子しか食べていない、よそではガツガツ食べる
- 過度に空腹を訴える、栄養失調が見て取れる
- 病気やけがをしても家族が受診を拒否、受診を勧めても行った気配がない
- 学校や職場に出てこない
- 支援者に会いたがらない、話したがらない
5.経済的虐待

本人の同意なしに(あるいはだますなどして)財産や年金、賃金を使ったり、本人が希望する金銭の使用を理由なく制限する行為。
【虐待の具体例】
年金や賃金を渡さない/本人の同意なしに財産や預貯金を処分・運用する/必要な金銭を渡さない・使わせない/本人の同意なしに年金等を管理して渡さない等
経済的虐待のサイン
- 働いて賃金を得ているのに貧しい身なりでお金を使っている様子がみられない
- 日常生活に必要な金銭を渡されていない
- 年金や賃金がどう管理されているのか本人が知らない
- サービスの利用料や生活費の支払いができない
- 資産の保有状況と生活状況との落差が激しい
- 親が本人の年金を管理し遊興費や生活費に使っているように思える
6.セルフネグレクト[自己による放任]
![セルフネグレクト[自己による放任]](https://kilc.org/wp/wp-content/themes/kilc/images/center/case_pic7.gif)
障害者本人が、自らの生活や健康を損なう状態のままで放置している場合があります。障害者虐待と同様に、周囲からの積極的な支援が必要です。
【虐待の具体例】
身近でセルフネグレクトのサインに気づいたら関係機関に通報・相談してください。
セルフネグレクトのサイン
周囲の人の「気づき」が救いの第一歩。セルフネグレクトは本人の命に関わる問題です。
- 昼間でも雨戸が閉まっている
- 電気、ガス、水道が止められていたり、新聞、テレビの受信料、家賃の支払いが滞っている
- ゴミが部屋の周囲に散乱している、部屋から異臭がする
- 郵便物がたまったまま放置されている
- 野良猫のたまり場になっている
- 近所の人や行政が相談に乗ろうとしても遠慮し、あきらめの態度がみられる
虐待のケース・虐待発見チェックリスト
早期発見→通報!
障害者虐待を見逃さない

「虐待」を受けている人は、本人にその自覚がない場合や、あきらめや我慢の気持ちが強く、自らSOSを訴えられないことがあります。
さらに障害のある人の中には、自らの気持ちを言葉にして他者に伝えることが苦手な人もいます。
周囲の人々が、小さな兆候を見逃さないことが大切です。
例示に類似した、「かもしれないサイン」に注意深く目を向けてみてください。
あなたの周りで、助けを求めている人がいるかもしれません。
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